月別アーカイブ: 2018年10月

「理学療法士が知っておきたいヒモトレ」ご報告

山口市にて、「理学療法士が知っておきたいヒモトレ」セミナーの講師を務めさせていただきました。
恩師・比嘉竜二先生から紡がれたご縁で、山口のお仲間が招いてくださいました。
前日に藤野貴之先生のご案内で訪れた、朴の森・鍵山記念館の余韻も残り、「凡事徹底」を通奏低音としての一日。

まずは、ヒモトレの導入
次に、医療職としてわきまえておきたいヒモトレ評価法
そして、ヒモトレでの送り手・受け手の感受性の変化
最後に、ペアヒモトレ

という、一度は通してお伝えしたかった内容が、実現しました。

理学療法士がヒモトレを知るなら、患者さんに、間違いなく、高い確率で良い方向へ変わっていただく視点を、持たないといけません。
(と、ヒモトレ以降の出会いから僕が教わりました)
また、あるヒモトレで良い変化が出るなら、手技や運動療法など、「より良い」すべを模索することを、怠りたくありません。FB_IMG_1540772139380

ありていに言えば、「ヒモトレに頼る程度、ヒモトレで左右される程度の施術しかできないのなら、施術者が大いに自省せなあかん」。
これは今、言ってて震えます。けれど、矜持は持たねば。FB_IMG_1540772174122

FB_IMG_1540772189962そして、ヒモトレの良さ、面白さはそれに留まらず。
たとえばご家族の中に、介助者と要介助者の役割がある場合、
お互いにヒモトレをすることで、介助負担が軽くなる、関係性に変化が生まれることが、よくあります。

セミナーでも、施術の送り手がタスキやお腹ヒモを巻くと、受け手の安心感や心地よさが変わるのを、経験してもらいました。
(てことは…、という自省を忘れずに…ですね)

そして最後のペアヒモトレ。
一日学んできた疲れや緊張感も、ほわっと緩む心地よさでした。
上司と部下のペアも、一緒に巻かれると距離感が変わる面白さ。FB_IMG_1540772217163

使い方の多様さは、言い始めるとキリがないですけれど、ヒモトレから観える価値観、医療職としてヒモトレから学べることなど、
お伝えしたいことは、おおよそお渡しできたと思います。
あとは、ご参加の皆さんが、それぞれの場で実践や気づきに繋げてくださることを、楽しみにしています。

今回はことさら、この時・この場に導いてくださった皆さま、当日出会った皆さま、その先にいる皆さまのお顔が目に浮かんでいます。
ありがとうございました。FB_IMG_1540730124306.jpg

まるだっこの会 ご報告

10月14日(日)午後の、まるだっこの会。
お母さんと1歳0ヶ月のお子さん、一組にご参加いただきました。

お母さんからは、「おんぶがしたい」というご希望を伺いました。
おんぶには、親子で同じものを見られる(例えばおんぶしながらお料理していると、子どもが野菜の名前や包丁の扱いを勝手に覚えてしまうことも)、
子どもを寝かしつけながら家事ができる、などの良さがあります。

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今回は、「おんぶしようとすると子どもが嫌がってしまう」というお声から、さらし、おんぶひも、へこおびを一緒に練習。

日頃お使いだったさらしの素材が、途中から伸びる素材に切り替わっていたため、安全性やお子さんの安心感への影響について、お伝えしました。
おんぶひもでは、普段のおんぶの位置が下がってしまう原因を掴めたようで、すっきりされたお顔が印象的でした。
へこおびの応用範囲の広さや、その時々のお子さんの様子に合わせた微調整なども、すいすいと吸収されて、こちらが嬉しくなるほど。

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色々な発見、経験が楽しいご様子で、「子育てが楽しくて!」と話されていたお母さんの、笑顔が素敵でした。

「子育てが、正直言うと大変で…」という方も、「不器用なんだけど大丈夫かな」という方も、もちろん安心して、いらしてくださいね。

11月14日(水) 10時30分~12時は、おかげさまで満席となりました。
11月25日(日) 13時30分~15時、まだ空きがございます(二組)。まるだっこ201810-2

だるま園10月「つられて動く」ご報告

テーマは「つられて動く」。大人13名、子ども5名で楽しみました。

事前に「大人がちょっと多いかな」と思ったのも杞憂に終わり、
子どもは子どもで、さっさと場に馴染んでしまい、
「子どものような大人」たちも、好奇心まる出しで動き回る、
という場が出来上がりました。

今回は、準備運動から伏線があり。
「石鹸で手を洗う」仕草を、直立のままやってみる/仕草につられて立ち位置も変えてみる。
「波につられるワカメのように」動いてみる。
なんてことを試しました。

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ワカメのあいだ、大人も子どもも、遠慮なく「ちゃんと」変な形になってくれて、ひと安心。

そして、今回も転がってみる。
自分から転がるのではなく、指先につられて転げる。
風船の形につられて、転げる。

さらに、自分だけでしゃがむ/つられてしゃがむの違い、など。

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もちろん、ひもトレ祭で仕入れてきたペアヒモトレも、さっそく取り入れ、
「離れると、ただそれぞれの動き」、「近過ぎると、邪魔される動き」、
その間にある「ちょうどいい距離感での動き」の不思議さに、やっぱり笑ってしまいました。

ペアヒモトレの応用として、おんぶヒモ。子どもが子どもをおぶって走る場面もあり。

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ペアヒモトレで賦活された「相手の背中に触れた刺激が、自分の背中でわかる」感じ。
それを残したまま、目をつむった人を導いてみたり。

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「つられて動く」をきっかけに、色々な経験をしました。

ここで一つ、参加者のご感想を。

「…頑張ったり、ふんばったり、やってやろうと作為的になることを手放すと、「あら!?できてる!」の連続!
ひっぱるのではなく、後からついていくのでもなく…
するのでもなく、させられるのでもない…別の世界。」

だるま園で大切にしたい事を汲み取っていただき、只々感謝です。
「あら!?できてる!」の経験がまずあって、それを疑わずに進むもよし、「…てことは」と遡って楽しむもよし。
いずれにしても、まず初めに、心が動く経験あること。それは大切にしています。

今回のテーマは、より深めていきたくなりました。今後、また何らかの形で出てくると思います。
次回のだるま園。屋内編は、2018年11月25日(日) 9時30分から、同じ東灘区民センターにて。
ピンときた方はぜひ、ご一緒しましょう。

まるだっこの会 10月と11月のご案内

整体だるま堂にて、抱っことおんぶの講座「まるだっこの会」を、月2回開きます。

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講座といっても、定員2組ですから、各々のご希望と慣れ具合を、見取り・聞き取りしながら、レッスンやカウンセリングのように進めていきます。

出産後、お母さんは「自分の体との親密さ」を取り戻すのに、時間がかかります。

どう歩いたらよいのか、わからない。
体が、ちぐはぐな感じがする。
周りの要求に応えるばかりで、自分に自信を持てなくなった。

…このようなお声も耳にします。
そんな時、抱っこやおんぶで、親子の体が「まとまる」ことをきっかけに、自分の体が再び、親密に思えてきます。

また、適切な抱っことおんぶは、子どもの姿勢、呼吸、周りへの興味などにも、好ましい影響を与えるといいます。

お母さん以外のご家族も、コツをつかむと、「しなきゃならない」から「させてもらえる」抱っことおんぶに変わります。

私たちが元々持っていた、文化や工夫を思い出すと、日々の暮らしが心地よく、愛おしくなりますよ。

[お申込み]
eri.dakko1113★gmail.com(←★を@に変えて)または、整体だるま堂ホームページ内のお問い合わせフォームから。

下記の内容をお知らせください。
①参加希望日 ②代表者のお名前 ③ご連絡先 ④参加人数と、お子さんがいる場合は月齢

当方からの返信をもって、ご予約確定とさせていただきます。

[講師紹介]
中西 衣理(なかにし えり)
看護師・保健師
二児の子育て中、NPO法人だっことおんぶの研究所 ベビーウェアリングコンシェルジュ資格を取得。
現在、神戸・岡山を中心に、定期講座を開催しています。

[関連リンク]
NPO法人 だっことおんぶの研究所
http://www.babywearinglabo.com/

5歳の女の子から教わったこと

昨日診せて頂いた、5歳の女の子。

症状としては、両手の中指と左手親指の、バネ指(指を握った後、伸ばしきるのが難しく、クリック感がある)。
1~2歳から、その傾向はあったそうです。
手術を勧められた経験もありますが、親御さんの希望は、「完全に治らなくていいので、うまく付き合いながら、成長に合わせて様子をみたい」。

手を診せてもらうと、確かに手根骨・中手骨は、おっしゃる症状が出そうな配列。
遊びがてらジャンプしてもらうと、頭部と手首(特に左)は、反る方への緊張が強まりやすい。
右骨盤隔膜、両横隔膜、左後頭下の可動性低下。概ねそれと一致する筋力低下。

このような所見だったので、良くなる可能性を感じ、触らせてもらいました。
後頭下を触り始めると、それまで賑やかだった女の子が寝息を立て、手足をピクピク動かしているので、治る力に感動しつつ5分ほど、数か所を施術。
施術後、可動性と筋力の変化が見て取れ、バネ指の症状もなくなったので、今後の方針を親御さんと相談しました。

この度は幸い、親御さんも治療者なので、先のような所見とともに、ヒモトレの鉢巻きと胸ヒモ(可動性の落ちていた高さに)をお伝えしました。
家にいる時・眠る時に、気が向けば巻くという程度で、2週間ほど経過を観ることにします。
親御さんの観る目が確かなのと、またお会いできるのがわかっているから、できる選択です。

今回、このようにご報告するのは、「こんなに上手く対処できて、すごいだろ」と言いたいわけではなく(むしろ書くほど、未熟さが浮き彫りになって恥ずかしい)。
「評価・検査をすると、自分の手におえる状態か否かがわかり、自分が手放して良いこともわかる」という経験が、あらためて新鮮だったのです。

評価・検査という言葉自体、治療者でなければ、馴染みがないかもしれません。評価といっても点数付けをするわけではなく、体の特徴を見出し、関わるうえでの優先度を付けるような過程です。
僕が知っている治療者は、(言語化するか否かは別として)この過程が精密、かつ、教育的です。
評価してもらう段階で、体を通して、「こっちに動くと良いよ」「こっちへ行ってみたら、どう?」というメッセージを感じます。

それは一つ、治療者を選んで頂く尺度になると思いますから、どうぞ頭の片隅に置いてください。
我ながら「どの口が言うんじゃ」と思いますが、自戒を込めて…

お薦めの一冊 『世界のだっことおんぶの絵本』

こんにちは。整体だるま堂の中西です。
本日、神戸は爽やかな秋晴れです。

さて、おかげさまで、今月から船出した「整体だるま堂」。
地域の「治癒、成長、学びの場」として、大切に育ててまいります。

僕たち家族にできることは本当にささやかですから、三つの事業を軸として、自分たちがよいと思うことを、地道にお伝えしていきます。

三つの軸とは、

・施術と武術(これは僕にとって分かちがたい「一つ」の軸)
・自然活動
・だっことおんぶ

です。

施術は、もちろん最も大切な柱です。この柱がしっかりする程、他の取り組みも豊かになると思っています。

自然活動は、「だるま園」にて。「園」と言っても、園舎はありません。月に一度、大人も子どもも一緒になって、自分たちのルーツである体や文化に、目を向けてみます。

そして、だっことおんぶ。こちらは主に、妻が担当します(近日中にご案内させて頂きます)。

近頃、小児科医や助産師、小学校の先生とお話する機会が多いのですが、こぞって懸念されているのが、子どもたちの姿勢、呼吸、運動経験の偏りについてです。
それらの偏りが、いつ・どこから始まっているのかは、個別性もあり、一概に言えない(言い過ぎると「呪い」にもなりうる)と思いますけれど。

だっこやおんぶが、赤ちゃんを「運ぶ」という目的にとどまらず、赤ちゃんの姿勢、呼吸、運動経験に豊かな恵みをもたらすことは、間違いないと思っています。

そのような、だっことおんぶの豊かさを知るのに、お薦めの一冊。
『世界のだっことおんぶの絵本』、メディカ出版、エメリー&ドゥルガー・バーナード文・絵、仁志田博司/園田正世監訳

文化の異なるさまざまな地域で、人々がどんなふうに赤ちゃんをだっこしているのか。
鮮やかな色合いの絵と、背景にある人々の暮らしを眺めるのも、楽しいです。ぜひ手に取ってみてください。

それでは、今日もよい一日を。