『さよなら、男社会』(尹雄大、亜紀書房、2020)
今、読めてよかった。
タイトルから思い浮かぶ「男性批判」の文脈は、一切ありません。
むしろ、この本を読めば救われる「男性」(女性の内にいる「男性」含めて)が多いのでは、と思います。
感想を少し。
社会について論じるならば、社会の基となる、個々の身体の探求から初めざるを得ない。
尹雄大さんの著作から、私は毎回このメッセージを受け取り、救われます。
そうして、自他の身体を省みた時に、「ありえたかもしれない」理想や、「そうであって欲しい」願望を押し付けることが、身体にとって、いかに無益(でありながら、いかに執拗に繰り返される態度)かを、日々思い知ります。
さりとて、これは「希望を持つな」という話では、決してありません。
誰の物かも分からない理想や願望に、きちんと「さよなら」することで、他ならぬ自らの希望が、明晰に立ち現れる。
そんな慈しみに満ちた話かと思いました。
自分の内なる曖昧模糊とした葛藤に、きちんと「さよなら」したい。
そう思う男女の手に、届いてほしい一冊です。
